Fumio Sasaki's Blog, page 16

April 2, 2018

おもてなしと忖度と「ペンタゴン・ペーパーズ」 佐々木典士

相手が口にしてないのに、その要望をたぶんこうだろうと推測し先回りして行動する。


喜ばれる「おもてなし」も、嫌われる「忖度」も根は同じ行動だ。



自分が思っていることであっても、直接口にしないことで軋轢を避ける。それは美徳でもある。しかしそうすると直接表されていないものを、いかに「うまく読めるか」が腕の見せどころになってしまい「空気の読み合い天下一武道会」が開催されてしまう。


 


仕事をしていてもたびたびこういう問題は起こる。力を持っている側が考えそうなことを考えなければいけない。以前、イタリアの雑誌でミニマリストを扱ってもらったことがあるのだが、ガラーンとしたミニマリストのクローゼットの対向ページに、ファッション広告が掲載されていてこちらが不安になったことがある。


 


 


ぼくにも日本スタイルの思考法はすっかり染み込んでいる。ぼくがその雑誌で働いていて、それに気づいたら「編集長、これ大丈夫ですかね?」と確認してしまう気がする。おそらくあのイタリアの雑誌では「記事の内容は、広告に影響されるべきではない」という考えが、編集部にも広告主にも共有されていたのではないだろうか? (もしくは単にイタリア人がおおらかで、あんまりいろいろ気にしてないというだけかもしれない。あの取材でも待ち合わせの方法もインタビューのスタイルも、今まで受けた取材のなかでいちばんおおらかだった)


 


そして「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」。このスピルバーグの新作は最高すぎる映画なのでぜひ見て欲しい。



 


こちらは口に出されない要望どころではない。この映画は政府から露骨に要望(圧力)がかかったとき、どうしたかというワシントン・ポストの物語だ。誇りを失ってしまえば、そこで終わりだ。

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Published on April 02, 2018 15:00

April 1, 2018

ゆっくり食べる秘訣 佐々木典士

痩せている人はたいてい、食べるのがゆっくりですよね。


食事をよく噛んで、ゆっくり食べるのがぼくの長年の課題でした。


・ひと口30回噛む


・ひと口ごとに箸を置く


などいろいろな方法はありますが、すぐに実践を忘れてしまい習慣にできるまでに至りませんでした。



 


コツというのはできるだけ意識するポイントが少ないことが大事だと思っています。


たとえばぼくが姿勢について気をつけているのは「骨盤を立てる」ということだけです。頭や首や、背中や肩、気をつけるポイントがたくさんありすぎると続けることが難しくなるからです。


 


 


ゆっくり食べることのコツも同じ。


松尾伊津香さんの「一生太らない魔法の食欲鎮静術」という本で紹介されていた方法は実にシンプルです。


それは食べ物を「舌先で味わう」ということ。これは結構効きました。


 



「味わうって、よく噛むってことですか?」冒頭の質問をされたら、私はこう答えます。「いいえ、違います。本当に味わおうと思ったら、よく噛もうと意識するのではなく、まずは舌先に食べ物をあてることです」



 


よく噛もうと意識すると、なぜか失敗してしまう。意識するのは歯ではなく、舌。


噛もうとするのではなく、単に舌先に食べ物をあてることを心がける。


なぜ舌先で味わうことが、ゆっくり食べることになるのか?


 


それは舌の動きが、飲み込むこととつながっているから。


 



①唾を口の中に溜めて、舌の様子を観察してからごっくんと飲み込む。(このとき、その舌の動きを覚えておく)


②今度は舌先を前歯で噛む。舌先が動かないように固定し、そのまま唾を飲み込む。


①と②を比べてみると、②のほうが唾を飲み込みにくく感じませんでしたか? そうなのです。何かを飲み込むとき、私たちの舌は勝手に奥に引っ込むようにできています。



 


つまり舌先で食べることだけ意識していると、すぐに飲み込むのが難しくなり必然的によく噛むようになるということ。


 



舌先で食べることを続けると、また自然と奥歯の方に食べ物が戻ってきてしまいます。これも長年の習慣で染み付いた食べ方のクセによるものです。それをまた舌先に戻します。3回くらいこれを繰り返し、食べ物の形がなくなってきたところで、舌の奥(付け根)に食べ物を回して飲み込みます。それまでは絶対に舌の奥に食べ物を置かないように気をつけてください。



 


敏感な舌先(松尾さんによると舌先3分の2は味覚に特化した神経なのだとか)で食べ物を味わいながら形を把握し、なくなるまで噛む。


 


ぼくが思ったメリットは、舌先で味わおうとすると必然的に舌に圧迫されて口腔内のスペースが小さくなるということ。


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普通の舌の状態で食べていると、上記に比べて口腔内のスペースが大きくなります。


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口腔内スペースが小さくなるので、箸で取るひと口も小さくなります。多すぎると、舌先から溢れて奥にいっちゃうのがわかるからです。


 


ランニングフォームのコツなどもいろいろあるのですが「速く走れるようになると自然に身についている」というものがあります。コツが先にあるのではなく、後からやってくる。


 


・ひと口30回噛む


・ひと口ごとに箸を置く


というのも後からやってきました。食べ物の形がなくなるまで噛もうとすると30回ぐらい噛んでいるし、箸を置こうとするのではなく、なんだか手持ち無沙汰になって箸をつい置いてしまう。


 


この食べ方を実践してみると、なかなか食事が減っていかないことに驚きます。今までなら一食分食べた感じがするところで、まだ半分以上残っていたり。


 


そうして目指すのは、満足感。松尾さんは、満腹感と満足感を分けて考えます。



●満腹感


胃が量で満たされた感覚。お腹がいっぱいになったという感覚


●満足感


精神的に満たされた感覚。心落ち着いたさま。お腹がいっぱいではないけれども「もういいや」と思える感覚



 


満足感があるから、適切な量で食事を終えられるということですね。


ぼくがいろいろ実践してみた中では即効性があり、かつ続けやすいと思いました。



松尾 伊津香「一生太らない魔法の食欲鎮静術


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舌先で味わうというアイデアはすばらしいと思います。個人的にはこの主要な部分の論旨や、エビデンスをもっと緻密に書き込んでほしい。20分ぐらいで読めたので、こういう本もあるんだな~と思いました。

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Published on April 01, 2018 15:18

March 29, 2018

テーマがあれば誰にでも話を聞ける 佐々木典士

ミニマリズムについてのお話をするとき、来てくれた方に話題を振るのは簡単だ。


「何か手放したいモノがあるんですか?」



たいていは、なかなか手放せないモノが残っていたり、自分のモノは済んだけれども家族のモノをどうにかしたい、という話になる。


 


モノは誰でも持っている。そして手放せない、片付けられない、という話は大抵の人が抱えている問題なので初対面の人同士でワークショップをするときでも多いに盛り上がる。


 


今は習慣がテーマになっているので、人に会うと


「どんなことを習慣にしていますか?」


「どんなことを習慣にしたいですか?」


と質問するのが定番になっている。


 


習慣も誰でも何かしら実践したり、目標にしているものがある。だから誰にでも質問ができる。習慣を維持するためのコツのようなものは誰でも持っているし、失敗しているなら失敗しているで、すべてが貴重なサンプルになる。


 


新聞やニュースを見るときにも、話題の中心でなくてもテーマに関する部分を抽出してしまう。たとえば、新聞に載っていたカズのインタビュー。カズは51歳で現役だが、引退をよぎったのは30歳の頃からだという。しかし「あと2年したらやめよう」と思っているうちに今の年になったそうだ。習慣を実践するなかで「目の前の目標だけに集中する」必要性を考えていたので、こういう記事も目に飛び込んでくるし忘れない。


 


テーマという磁石を持っていると、膨大な情報から必要なものを選別して集めることができる。


 


サブカル雑誌にいた頃、


「君はロッド・スチュワートについてどう思う?」


と突然質問されたことが忘れられない。こういう質問もとても刺激的で素敵だが、相手の興味を深く知っていないのであれば、できるだけテーマは一般的なものがいいだろう。


 


「節約で気をつけていることありますか?」


「仕事を早く終えるために心がけていることはありますか?」


「遠距離恋愛したことありますか?」


 


というような質問なら大抵の人がなんらかの考えや経験則を持っているのではないだろうか。気になるテーマを持っていれば、目の前のすべての人に話を聞くことができるし、誰もが師匠にもなる。

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Published on March 29, 2018 15:00

March 28, 2018

「モノの人事異動」と最近使っているタオル 佐々木典士

ゆるりまいさんは、モノの用途変更を「モノの人事異動」と呼んでいる。たとえば、ゆるりさんは使わなくなったが形のかわいい鍋を、猫の水入れにしている。



以前「モノを社員として考える」という記事を書いたが、モノを会社で考えるのはなかなかおもしろい。自分の生活のためにいろんな役割を持ったモノが集まってくる、というのは会社っぽいし比喩として使いやすい。


 


モノを入社してもらってから人事異動させることもあるし、採用の段階で希望の部署と違うところに配属させることもある。


 


たとえば、以前は赤ちゃん用の洗濯石鹸を、洗濯だけでなく家中の洗剤として使っていたことがある。もちろんシャンプーにも身体を洗うのにも使っていた。


 


石鹸がいい例だが、◯◯用と用途別に細かく別れていても実際の成分はほとんどまったく変わらない。ということは多い。「繊細な赤ちゃんの服を洗えるなら自分の身体も問題なく洗えるだろ」と思って始めたのだが、実際になんの問題もなかった。


 


実際中身はほとんど同じでもこれは◯◯用、これは◯◯用と用途を区切って販売されていると、なんとなく専用のモノが必要なのかなと思ってしまう。そうすればたくさんのモノを買ってもらえる。


 


◯◯用という希望の部署があっても「キミ、実際はこっちのほうが向いてるよね」と入社の段階で適正を判断することもある。


 


ぼくは長らく1枚の手ぬぐいをタオルとして使っていた。シャワーを浴びたら髪と身体を拭いて、さっと手洗いし干す。手ぬぐいは数時間で乾くので、次使うときには乾いていて、1枚で延々とサイクルをまわしていける。手ぬぐいはビッタビタになるが1枚で拭けないことはない。今も旅行中は手ぬぐいだ。


 


手ぬぐいで問題ないのだが、もうちょっとバッファがあっていいかなと思って最近使い始めたのは「洗車用のタオル」である。赤ちゃん用石鹸のときと同じで、車を傷つけないように繊細に作られたマイクロファイバーなら、ぼくの身体も大丈夫だろうというわけだ。


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このタオルのいいところは、まず手頃なサイズと吸水性(髪の長い女性は1枚では無理かもしれないが、吸水性が洗車用としても評価が高い)。そして独特のコシがあって、とんでもなくたたみやすいところが気に入っている。ストーンと2つに折れる。


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「キミ、洗車希望らしいけどぼくのタオルとして働いてみない?」と採用を決めた。本人が意識すらしていない適正を見抜けると、なんだかおかしな満足感があるものだ。


 



洗車 タオル  傷防止 超吸水 マイクロファイバー(42x35cm) (4枚入) [image error]


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もちろん洗車にも最高です笑。

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Published on March 28, 2018 15:00

March 21, 2018

エンドロールとお葬式 佐々木典士

映画のエンドロールは、映画好きを自認していたときはスタッフの名前まで覚えようと必死で見ていたような気がする。今はもうそれもおさまって、なんとなく映画の物語を反芻する時間に使っている。それほど思い入れがなかったり、あまりに長くなりそうなときは途中で退席することもある。



エンドロールはいらないといえばいらない(最近見直した『ダーティハリー』だと30秒ぐらいしかない。昔の映画はほんとうにあっさり終わる)けれども、今は映画の「余韻」だと思うようになった。


 


先日、祖母のお葬式に出た。ぼく個人は自分に何かあってもお葬式はしてほしくない。お墓ではなく海か山に散骨してもらって自然に還りたいと思っている。


 


しかしお葬式にも意味はある。お葬式で、初めて会うような祖母のきょうだいに会う。いとこや叔父叔母とも久々に近況を話す。お葬式は人が集まる機会だ。


 


祖母は93歳の大往生だった。悲しみもあるが、そうなると思い出話に花が咲く。母の子ども時代の話なんて、こんなこともなければなかなか聞く機会がない。


 


祖母の歴史も改めて語られる。祖母は若い頃、従軍看護婦として満州で働いていた。満州なんてどうも自分との関係が想像しづらいが、そこから今の自分まで連綿と続いているものが確かにあるのだ。


 


祖母は、お琴やお茶、お花などをたしなんでいた。そして足を悪くしてからも旅行に出かけていたという。今の自分の多趣味ぶりと、旅行好きにも何か繋がっているという気がする。


 


お葬式に出て、手を合わせたり、念仏を聞く。それはエンドロールのように、故人の物語を反芻する余韻でもあるのだろう。

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Published on March 21, 2018 19:06

March 17, 2018

わがやのコーヒー環境 佐々木典士

フリーランスになって家にいる時間がながくなり、増えたもののひとつが、お茶やコーヒーにまつわるものです。



まずは、お茶や紅茶を飲む急須はKINTO[image error]


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KINTOの製品はどれもミニマリズムを追求していて好きなメーカーです。


この急須の何がいいかというと、まずはガラスでできているのでお茶や紅茶の出ぐあいが目で見てはっきりわかるということ。


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ガラスの急須は他にもありますが、こちらを特徴づけているのが茶こし部分がフタについていること。


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つまり、注ぐときに茶葉がこされるしくみ。狭い茶こしではないので、お湯を注ぐときに勢い良くそそげて、葉も開きやすい。そしてこす部分が小さいので、茶葉がつまったりせず洗い物も簡単。ちなみに出がらしは冷めてから、手でムンズと取り出します。このへんが気になる人は気になるかも。


 


気に入ったものは長く使いたいので、ガラス部分や、パッキンのみでも手に入りありがたい。KINTOのカスタマーサポートもとても丁寧だったので、おすすめ。


 


コップは長年使っているiwaki Airシリーズ[image error]の230mlのもの。


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まずダブルウォール、二重構造なので冷たいものも温かいものも保温性がいい。


そして、持っても熱くない。ダブルウォールには水滴がつかないこともポイント。飲み口も優しい。もちろん洗いやすい。


 


ジュース、お茶、コーヒーなんでもいけます。もちろんビールやワインもね。


日本茶は湯呑みで、コーヒーはコーヒカップで飲んだほうが味わいがあると思うのですが、この機能性にひれ伏しています。コップは永遠にこれでいいとぐらい気に入っているもの。


 


これに出会う前はボダムのダブルウォールを使っていたのですが、まあ割れること。これに出会ってからは、普段使っていて割れるようなことはありません。落としたら割れるので、その度に買い直しています。


 


コーヒーミルはさんざん悩んだ末、アウトドアブランドの雄、ユニフレーム のものに。


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アウトドア用らしく、下部にスポッとミル部分が収納できます。


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ミルを選ぶにあたっては、


・コーヒー豆が入れやすいこと


・なおかつ挽いた豆が飛んでいかないこと(飛んでいく豆には意味があるとおっしゃっていたロースターの方もいましたが、普段使いには飛ばないほうがありがたい)


・挽いた豆が取り出しやすいこと


を重視していました。


 


こちらのミルは開口部が大きいので豆が入れやすく、深いので飛び散りにくい。


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そして挽いた豆を受ける部分が金属なので、挽いたあとにさらさらと入れることができます。


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デメリットとしては、豆はとても出し入れしやすい反面、ミル部分は載っかっているだけのような感じなので、手でしっかり抑える必要があるということ。もうちょっと固定できる仕組みがあるとなおよかったかも。


 


2杯分の豆を挽こうとすると4~5分かかるので、もっとたくさん作る必要があるなら電動のほうがいいかもですね。ぼくは今のところ豆を挽く時間を「意味のない作業はない」と日々確認するために使っています。瞑想のようにも使えるし、コーヒー豆をストレスに見立ててガリガリとやるのもなかなかいいです。


 


ドリッパーはド定番!! ハリオの V60 (1~2杯用)


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こちらはドリッパーといえば、というぐらい定番ですね。


セラミックタイプのもので、赤もあってかわいい。特徴はスパイラルリブという、ひだがあって空気層があることでペーパーが密着せず、抽出が早いということ。


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1杯分のコーヒーを入れるときは、さきほどのIwakiの上にそのままどん!!


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シンプル。洗い物少ない=正義。


今は朝に飲む用と、お弁当食べたあと用の2杯のコーヒーを一度に淹れるのですが。


なんと!!  V60がKINTOの急須にぴったり。


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なんというか「そっか……2人は付き合ってたんだ、ごめん…俺ぜんぜん知らなくて(チャリで走り出す)」というような感じ!!


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これで急須兼サーバーに。淹れたコーヒーも注ぎやすい。


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水筒にも入れて、あたたかくて美味しいコーヒーも昼食後にも飲むと。


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こだわりポイントもいろいろあって、自分は本当にモノが好きなミニマリストなんだと思いますね。


ゆるりまいさんとの対談でも話しましたが、こだわりが強すぎると苦しくなってしまう。でもそういう人は、もうずっとこれでいいと思えるものが見つかると、その後本当に楽になるんですよね。


 


そしてコップでは機能性至上で選んでいるのに、コーヒーは豆から挽いたりハンドドリップしたりしている。どこにポイントをおくかも人それぞれで、そういうのが面白いですよね。


 



キントー ワンタッチティーポット ユニティ 460ml [image error]

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iwaki Airシリーズ  Airグラス 230ml [image error]


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ユニフレーム UFコーヒーミル [image error]


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HARIO V60 コーヒードリッパー セラミック 1~2杯用 [image error]

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Published on March 17, 2018 15:33

March 15, 2018

半径5mからの環境学「農的な暮らしについて シャロムヒュッテの臼井健二さんに聞く」 佐々木典士

長野県安曇野のゲストハウス、シャロムヒュッテは38年前に臼井さんとそのお仲間でセルフビルドされた宿です。自然と調和した農的な暮らしを長年続けられ、臼井さんのもとで多くの後進たちが学びを得て来ました。今の暮らしに至った経緯と、臼井さんの哲学をお聞きしました。初出:「むすび」2018年2月号(正食協会)



今月のゲスト 臼井健二(うすい けんじ)さん


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1949年長野県生まれ。商社勤務、山小屋の小屋番を経て1979年、安曇野市穂高にシャロムヒュッテをオープン。2005年には北安曇郡池田町に姉妹宿シャンティクティを開設。著作に『パーマカルチャー事始め[image error]』(創森社)がある。


商社勤務から山小屋へ

 


──シャロムヒュッテがある穂高が地元でいらっしゃいますが、元々自然と近いところで過ごされていたんでしょうか?


高校の頃は山岳部で休みの日は常念岳なんかによく登っていましたね。その後は都会に出て、商社に入社しました。商社には1年半ぐらいいましてね。伝票を右から左に流して、自分が作ったものを販売するわけではないのに、それで利益が出てご飯を食べることができるということに違和感を覚えたんです。


──商社で働かれていた経験も気づきのきっかけになったんですね。


商社を辞めて、それからは大天荘という山小屋で5年ほど小屋番をしていました。山はある意味でユートピアなんですよ。持っているお金に関係なく、バテるときはみんなバテるし、雨が降ったら全員濡れて、翌日晴れると太陽の暖かさをみんなで感じる。誰もが平等でとても素晴らしい世界なんだけれども、その暮らしも実は消費社会なんですよね。もちろん自然と触れる機会は多いけれど、種を植えて、それが実を結んで、収獲してという生産のプロセスがここでも欠けていると感じました。そして27歳からシャロムヒュッテをつくり始めて、1979年にオープンしました。消費するだけではなくて、生産したい。そういう心の動きがありましたね。


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曰く、「大工1人とバカ8人」で3年がかりでセルフビルドされたというシャロムヒュッテ。38年の実験の成果がこれでもかと詰まった宿。スタッフは若い人が多く気軽に宿泊できます。


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毎朝シャロムヒュッテで行われるのが「エコツアー」。様々な農法の解説や、環境への取り組みを説明を丁寧に受けることができます。運がよければ、臼井さんの解説に当たることも。


みんなで作業する意義

 


──宿を作られたときに、すでに環境や持続可能性についての意識はおありになったんですか?


そうですね。パーマカルチャーという言葉を使うこともありますが、もともと江戸時代も里山の文化も、日本の伝統的な暮らしは循環型で持続可能なものだったと思うんです。そういう農的な暮らしをベースにしながら、その上に宿やレストランを構築していこうと思ったんです。たとえば食べ物にしても都会の生活のようにお金で解決すると簡単です。でも農的な暮らしってすごく大変で、だからこそみんなで集まって寄り添ってやることの意義が出てくるわけです。


 


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玄米菜食の食事はドネーション制。カフェレストランも併設されています。安曇野の草原と、美しい山々を見ながらの朝食は格別。


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シャンプーは重そう水+酢リンス。こちらに宿泊する間は、だれでも環境負荷の小さい生活を体験してみることになります。


 


──確かにこちらのワークショップで手植えの田植えも体験させて頂いたんですけど、その後にあぜ道にみんなで座っておにぎり食べたり、お茶したりが楽しかったですね。


みんなで一緒に作業した苦労と達成感は、コンバインとかトラクターでする作業とは少し違うんですよね。しかもそういう農機具や維持費にお金がかかり、豊かでなくなったりする。食べるものを売るためではなくて、自給するためでしたらがんばって耕さなくていいわけで、鋸鎌と、足踏み脱穀機、唐箕(とうみ)あたりで間に合うわけです。そして朝の30分ぐらいで畑仕事が済めば、他の仕事に取り組む可能性も広がってくる。


スキルを分け与える喜び

 


──ぼくも環境の意識作りのきっかけには、プランターでもいいから何かを育て始めることが有効かなと思います。消費だけしていると、自分が自然界のなかに属しているという感覚が薄れていくんですよね。


種を蒔くと、雨が気になったり、草が気になったりいろんな方向に目が向くんですよね。都会の暮らしって本当に便利でありがたいんだけれども、その逆で、分断して競争させるわけですよ。朝から晩までキーパンチだけしてもらえば、絶対的に効率があがるわけです。でもそれだけを仕事にすると嫌になってしまう。競争しているから憎しみもたまります。本来人間はもっと雑多にできていて、いろんなことをするようにできていると思うんです。そうすると飽きない。そうして培ったスキルを他人に分け与えることができる、そこがいちばんの喜びがあると思うんですよね。


──こちらでの暮らしも、完璧に自給自足とか、完全オフグリッド(電力会社の電力網から切り離されたエネルギー自給)を目指されているわけではないんですもんね。


完璧であるということは、すべてを排他するということでもあります。それよりも100人いれば、100人それぞれに秀でたところがあって、そして欠けているところがあって、お互い補い合う。それが本来の人間とコミュニティの姿ではないかと思います。


 


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スキル交換の場として頻繁にワークショップも開催。こちらは「軽トラキャンパーワークショップ」の作業風景。野外保育「森の子」も同じ敷地内で運営。


 


──シャロムヒュッテに宿泊してみるだけでも、自分とは違う形の暮らしがあることがわかって環境への意識が高まると思います。臼井さんは旅もお好きで、いろいろな所に行かれていますね。


学生時代は旅をたくさんして、ユースホステルに150泊ぐらい泊まったと思います。旅も自分の環境を俯瞰するためには重要で、同じところにずっといるとわからないんですよ。蛙が同じ鍋のなかにいたとすると、そこで温度が上がっていっても我慢しちゃうかもしれない。でも外からぴょんと入ってきた蛙なら、暑いからすぐに飛び出しちゃいますよね。それと同じような気がするんですよね。価値観の違う場所で、違う風に吹かれてみたり、違う雨に降られてみる、そこから大きな刺激を受けます。私もこれから友人がインドで土地を買ったので、そこのお手伝いをしようと思っているんですよ。農的な暮らしをしながら、チベット文化を継承する場所を作るお手伝いです。日本ではもういろいろやったかなという気持ちもありますね(笑)。今まで学んできたことを活かして、恩返しのようなつもりで臨みたいと思っています。


 


臼井健二さんよりおすすめの1冊


ぼくを探しに[image error]』(講談社)


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自分は欠けている。だから完璧に埋めてくれるかけらを探しに行く。「完成の手前で留まるのではなく、完成を超えること。これを禅の言葉で不均斉と呼びます。完成を超えても、見た目は一緒でやはり欠けている。でもその前後で心はぜんぜん違う。欠けていることを肯定できるといいですね」

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Published on March 15, 2018 21:39

March 11, 2018

早起きのコツ「チャンクダウン」 佐々木典士

早起きするには、1にも2にも3にも、ベッドに入る時間を決めて、充分な睡眠時間を確保することだと思う。


しかしそうしていても、起きたい時間に睡眠のリズムが合わなくて目覚めづらいことはあるし、今の時期、まだ寒さが残っていて起きづらいこともあると思う。


そんなときは「起きる」という行為を小分けにして考えること。



「起きる」ことを、いきなり布団をはぎ、ガバっと起き上がることだと思うとハードルが高くなってしまう。だから、小分けにした行為をひとつずつクリアしていく。


 



□まず目だけ開ける(体はそのまま寝ていていい)


□その状態になじんできたら半分だけ布団をはぐ


□その状態にもなじんできたらさらにもう半分


□ベッドから外に一歩足を踏み出す



 


最後の一歩外に足を出すときがいちばん大変かもしれない。だから


「一歩足を出したとき、もし立っていられないほどの眠気に襲われたらもう一度布団に戻っていい」という条件を与える。


 


 


実際は目を開けたり、ベッドから一歩足を出してしまえば、その状態に頭が段々慣れて目覚めていく。二度寝してしまうのは、目も開けずにそのままの状態を維持してしまうから。


 


 


ハードルが高い行為は、小分けにする。


そしてひとつずつクリアしていく。


このことを「チャンクダウン」という。


 


 


チャンクというのは大きなかたまりという意味。


チャンクダウンは何にでも応用可能だ。


 


 


スティーヴン・ガイズの『小さな習慣[image error]』で挙げられている例がぼくは好きだ。



もし好きな女の子をデートに誘えずにいるのなら、まず彼女のいる方向に左足を一歩踏み出します。次に右足を一歩出します。そうすれば、じきに彼女のいる場所にたどり着きます。彼女はあなたに「なぜそんなおかしな歩き方をしているの?」と尋ねてくるでしょう。それが会話のきっかけになります。



 


今、女の子をデートに誘うならLINEかもしれない。


いきなり送信するのが難しければ、一文字一文字打つことを目標にするのもいい。


 



スティーヴン・ガイズ『小さな習慣』

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Published on March 11, 2018 15:00

March 8, 2018

記憶ともう一度出会う 佐々木典士

ぼくがスマホを手にしたのは、2012年のこと。それ以降は出来事の記憶が以前より残っていると思うようになった。家族で話をすると、昔どこ行った、あそこに旅行行った、という話になるのだが全然覚えてなくていつも申し訳なく思う。せっかく連れて行ってくれたのに。



理由としては、まず自分で計画してない旅は記憶に残りづらいということ。お任せの旅と、自分で苦労して交通機関を調べ、目的地をつなげた旅とは地名などの記憶も全然違う。


 


そしてスマホ以降の記憶が残るようになったのは、ひとえにスマホのアルバム、カメラロールを見る機会が多くなったからだと思う。写真は日付と紐付けられているので、それが2015年に撮った写真だとかいうことはすぐにわかる。そして「あれいつだっけ?」とかなんだかんだ検索する機会が多い。押入れの奥にあるのではなく、いつでも取り出せるポケットの中にアルバムがあるというのも大きい。単に復習できる機会が増えたのだ


書かなければ忘れる

 


書くことでも記憶に残りやすくなる。


まず書くときに思い出し、出来事を自分なりに整理することになる。


 


起こったことすべては書けない。授業を受けたら、大事なポイントをわかりやすくノートにまとめるような感じ。書くときに手を動かしたり、キーパンチしたりというのも記憶の定着を助けていると思う。


 


 


誰かに伝える前提だとなおさらだ。映画評や書評なども、このブログに書いたもののほうが記憶に残っていると感じる。人に伝えるべく整理されているということは、自分にとっても整理されているということ。


 


 


たとえば今まで映画も数千本は見ていると思うが、大部分は感想を残してなくて覚えてないものが多い。記憶に残っているどころか、もはや無のようになってしまって、Amazonプライムでもう一度見始めたりしてしまうこともある。内容は覚えてなくても「これ見たことあるな」ということだけはわかるので、脳はやはりすごいなと感心したりもする。


 


 


映画批評家といえば、いろいろ映画の細部を覚えていてすごいなと思うが、やはり書くことで定着されているのではないか。思い出しながら書き、書いたことでまた見返しやすくなる。


 


そして、書いても忘れる

 


残念なことに、書いても忘れる。


これは本当に自分が書いたのかと思うこともよくある。


自分が書いた証拠は、自分の署名が確かにあるだけ、という感じ。


 


 


書かないと忘れる。


書いても忘れる。


しかし書いておくと、思い出せる。


正確に言うと、思い出せているわけではなく、もう一度出会いやすくなるのだと思う。


 


 


溢れる情報の中で、同じ情報ともう一度出会うことはまれだ。「世の中の情報すべて集めた図書館」があったとして、その本棚には自分が書いたものも、他の作者が書いたものと同じようにズラッーと並んでいる。


 


 


そんな膨大な本棚を前にすると迷ってしまう。そんなときにいちばん馴染みのある「自分」という作者の名前を見つけたら、手に取ってみようかと思える。舞台裏をよく知っていて、楽屋オチがいちばん楽しめる読者は自分だ。こうして、忘れていても、もう一度出会いやすくなるのではないだろうか。

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Published on March 08, 2018 14:00

March 7, 2018

お弁当のある生活 佐々木典士

お弁当生活をはじめてからしばらくたった。朝の手間は増えたけど、面倒でもなく続いている。これはものすごく内容を簡単にしているから。



基本的に卵焼き+各種ぬか漬け。


ごはんにふりかけや梅干し。


そして忘れてはいけない、干し野菜の味噌汁。


毎日同じでも飽きない食材をラインナップ。


食後には水筒に入れたホットコーヒー。


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お弁当にはメインとして「節約」のイメージがあった。今は少し違って「食べる量を自分で決められる」ということに要旨があるように思う。


 


お弁当箱というハードウェアの限界はすでに決まっている。だから適切なお弁当箱のサイズを選んでしまえば、盛れる量も必然と決まる。


 


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外食は楽しいが「出てくる量がよくわからない」のがマイナスポイントだ。そして少ないよりはいいだろうということで、多めにされることが多い。ぼくは出された食事を残すのが苦手なので、あると食べてしまう。だから自分で食べる量を決めることで、お腹を減ってもいなく、苦しくもない状態に保てるのがいい。


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お弁当を食べたら仕事に戻るので、食べすぎて眠たくならない量にする。そして、ここで新たな試みも始めた。ぼくはごはんを食べるのがとっても早く、どうにかしたいと思ってあれこれ試してきたのだが、なかなかうまく行かない。


 


そこで「お弁当を食べ終えたら、すぐに仕事に戻る」というルールにしてみた。


つまり、早く食べてしまうことにわかりやすい罰則を作った。お弁当は少なめなので、早く食べるとあっという間になくなってしまう。これで必然的に前よりもよく噛んで食べるようになった。まだまだだが、昼食以外にも効果はでてきているように思う。



いくつかお問い合わせ頂いていた、お弁当環境もお知らせ。


 


お弁当箱はメスティン。車中泊やキャンプのときにはこれでご飯を炊ける。というか本来ご飯を炊くもの。しかしサイズもちょうどよく、女性でもいい感じのサイズ感だと思う。これで炊いたご飯は「山と食欲と私 」で頻出していてめちゃくちゃ美味しそう。曲げわっぱなどとも散々悩んだ末、多用途に使えることが決め手になった。


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お箸はモンベルの「野箸」。ネジ式で短くなり、お箸が汚れる部分は常に内側になるという優れた仕組み。ケースもついてくるが使っていない。マイ箸派の方にもおすすめ。


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メスティンの蓋と、お箸をこのベルトで止めている。


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味噌汁を入れるスープジャーは、シンプルな色とデザインのものがなかなかないので結構探した。シンプルなデザイン&洗いやすさを重視。


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水筒はTIGERの夢重力。すごい名前。軽さと洗いやすさがよい。


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毎日図書館に通っているので、ビニールバッグも購入。Mサイズで、13インチのMacBook Airがきっちり収まる。

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Published on March 07, 2018 14:03

Fumio Sasaki's Blog

Fumio Sasaki
Fumio Sasaki isn't a Goodreads Author (yet), but they do have a blog, so here are some recent posts imported from their feed.
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