組曲『ガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)』

遥か昔、平和な現代の名士と知恵や世界観をぶつけ合っても引けを取らない人物がいた。その人物の名は『ガイウス・ユリウス・カエサル』である。別名『ジュリアス・シーザー』だ。もし私に『カエサルのイメージに近い日本人は誰か?』と聞かれれば『坂本竜馬』と答えるだろう。カエサルと坂本竜馬がタッグを組んだ世の中を想像するととても面白いイマジネーションが私の頭の中を駆け巡る。穏やかな湘南海岸を眺めながらこのふたりを中心にファンタジックな世界を想像する。いつの間にか時を忘れ自然と笑みがこぼれてくる。

私はカエサルの人生を戯曲風にして記載したので『組曲』と命名しました。さあ、皆さん! 古代ローマを想像する旅に出掛けましょう。

ガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)は芸術的な美しさをもった近代都市ローマ帝国の基礎を作った政治家であり軍人です。

ウィリアム・シェイクスピアの戯曲(タイトル: ブルトゥスお前もか!)
セリフ:『ブルトゥスよ!お前もか!』で有名になります。

鋭利な刃物のように切れ味の鋭いカエサルは紀元前44年3月15日ポンペイウス劇場の裏の回廊で行われた元老院の議会に出席。
時刻は11時。
この時、歴史の1ページを飾る大事が起こります。
そうです。誰もが知る古代ローマを代表する人物が議会の壇上で暗殺されてしまいます。
この人物は憎たらしい程に剛腕。敵も多いようですがローマ市民から絶大な支持を得た格好好いヒーロー。なぜか人の心をグッと引き付ける何かがあるようです。まるで王のような存在になり事件が起きました。
そうこの人物は皆さんが良く知っている『ガイウス・ユリウス・カエサル(別名:ジュリアス・シーザー)』です。

この暗殺事件がきっかけで古代ローマは激流のように大きく動き出します。

後日、ティルス神殿にて元老院緊急集会を開催。このときアントニウスは重要な提案をしました。提案内容は『遺書の公表』と『遺骸の公開』です。この提案が多くのローマ市民の心を揺り動かすことになります。なんとカエサルはローマ市民に金貨やカエサル庭園などを遺贈する事を書いていたのです。彼のローマを愛する熱い思いが伝わってくる書面だったようです。

いつもと異なる爽やかな風が吹き抜ける3月19日の古代ローマ。この日はカエサルの葬儀。偉大なるカエサルの遺骸は大勢の人に見守られ大神祇官公邸ドムス・ブブリカを出発。異様な雰囲気の中をフォルム・ロマノフまで進みます。
そこでアントニウスは民衆に遺書を感情豊かに読み上げたあと偉大なカエサルを失った遺恨を切実に訴えたのです。彼の凛とした声は美しく響き渡り、静かに目を閉じた聴衆の深奥の鐘を激しく鳴らしたのです。小鳥も彼の声に合わせピヨピヨと鳴いています。
詩(うた)のような彼の朗読に聞き入る人達はなぜか悲しみから激しい怒りに変化するのが感じられます。瞳は鋭く握り拳に怒りの汗が伝わり異様な雰囲気に変化します。

聴衆は役者のような名演説のアントニウスが読み上げる遺書の中に今後を大きく左右させることが書かれていたのです。
何とこの遺書の中に19歳の青年オクタヴィウス(後に『アウグストゥス』と呼ばれる)がユリウス・カエサルの法定相続人であることが書かれていました。
これにより青年オクタヴィウス が真の継承者となりました。そして名前をガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌスと改名します。

彼は大きな期待と責任を背負い復讐心に燃え立ち上がりました。

オクタウィアヌスとアントニウスとレピドゥスは政治協力を誓います。これにより3頭政治が決議され時代は大きく動き出します。

ユリウス・カエサル を殺害した一派は一気に窮地へと追い込まれます。キケロはアントニウスウスによって一撃を受け、ブルトゥスはその後の戦いで追い込まれ自害することになります。

結果、平和なローマ帝国を築き、ユリウス・カエサルの夢である芸術的で美しいローマがオクタウィアヌス(初代皇帝アウグストゥス)によって出来あがります。

この大きな起爆剤になったのが民衆の怒りでした。古代ローマ を大きく動かしたのは一人の指導者ではなくローマ市民 です。

カエサルの葬儀には多くの民衆が集まり涙を流したと言われています。そして献花が絶え間なかったようです。また偉大なカエサルの影響がいつまでも尽きることがなかったため初代皇帝アウグストゥスを悩ませたほどです。

(勲功)
髪の毛の短い可愛い顔の少年は大好きな聖地『カンピドリオの丘』を度々訪れローマを見渡すのである。そこに可愛い巫女コルネリアが静かに現れ朝日を浴びた彼の横顔を見つめる。その彼女の瞳もダイヤモンドのように美しく輝いている。
「カエサル! ここは聖地よ! 見つかると怒られるわよ! ウフフフフ・・・」
「コルネリア! 将来、必ず僕がこのローマを世界一素敵な都市して見せるよ!」
「それは頼もしいこと! 期待しているわ。ウフフフ・・・」
朝日を浴びたこの少年は遥かな未来を想像しながら古代ローマに向けて鋭い視線を投げ込むのである。この時はまだ、近代都市ローマとは呼べない姿であったが、可愛い純粋な彼には美しい古代ローマ像が眼(まなこ)に投影されていたのである。この少年の名はガイウス・ユリウス・カエサルである。

カエサルは祖母がマリウス(民衆派)の妻でもあり名門貴族出身です。

16歳の時スッラ(門閥派)の政敵である執政官キンナ(民衆派)の娘コルネリア(2人目の出産で死亡:享年26歳)と結婚しユピテル司祭の職に就任します。日本ではまだ中学生か高校生ぐらいの年齢です。

しかし、門閥派(オプティマテス)と民衆派(ポプラレス)の激しい戦いからキンナ(民衆派)が暗殺された(事故死の説あり)ことでカエサル は失職に追い込まれ全財産を没収。更に命までも危ぶまれる事態に遭遇します。カエサルはこのとき窮地に追い込まれます。

人望が厚く誰からも愛されたカエサルはウェスタ神殿にいる若く可愛い巫女からも
「なんとか罪なきカエサルの命だけはお助けを!」
と嘆願されたためスッラ(門閥派)は渋々恩赦を出したのですが妻コルネリアと離婚するように迫られます。

カエサルはこの無情なる命令に逆らいながらも天性の才能を生かし古代ローマから離れ復活を遂げます。

スッラ(門閥派)の死後彼はローマに戻り勢い付きます。このとき彼はまだ22歳です。
カエサルは民衆派の支持を経て次々と重要な要職に就きます。同時に無一文から豊富な蓄財をする能力は目を見張るものがあります。
上級将校(29歳)、財務官(31歳)、造営官(35歳)、最高神祇官(37歳)、法務官(38歳)に就任。

紀元前60年ポンペイウス、クラッスス、カエサル が手を結び政治協力を誓います。
これが3頭政治体制です。

次の年の紀元前59年執政官(41歳)に就任。
その次の年の紀元前58年ガリア戦争では軍事司令官であるガリア総督(42歳)に就任します。
更にめでたい事にカエサルの娘ユリアがポンペイウスの妻になります。

しかし、このころから一気に人生の下り坂を迎えます。娘ユリアと生まれたばかりの孫が亡くなります。また、紀元前53年クラッススも戦死してしまいます。

そして紀元前49年最高指揮権の任期が迫りローマから出て行かなければならない事態に追い込まれます。もし法に従えば彼は悪の根源として追われることに繋がりかねません。
さあ、窮地に追い込まれたカエサルは大きな賭けに出ます。

時は紀元前49年1月10日。
そうです。彼は軍を引き連れ古代ローマに迫りルビコン川を越えたことで軍事クーデターを起こすのです。
このとき発した言葉『賽(さい)は投げられた』です。有名な言葉です。辞書にも掲載されています。
勢いに乗るカエサルは逃げるポンペイウス軍を追い古代エジプトへ。
時は紀元前48年8月9日古代エジプトで歴史に残る戦いを繰り広げました。この戦いをファルサルスの戦いと呼びます。カエサルは見事に門閥派であるポンペイウス軍を撃砕します。
この軍を率いるポンペイウスは古代エジプトの王に殺害されてしまうのです。

カエサル軍は見事に勝利し古代ローマの新たな歴史を作る第一歩を踏み出すことになります。カエサルは古代エジプトの王であるプトレマイオス13世を殺害することで女王クレオパトラ7世に権力を集中させます。

この若く美しい女王クレオパトラ7世に古代エジプトの統治を委ねます。さらに女王クレオパトラ7世とカエサルとの間に子供カエサリオン・プトレマイオスができます。

カエサルは激しい戦乱の後この地で穏やかな時間を過ごした事で様々なことを見詰め直した充電期間になったのかも知れません。カエサルは地中海域でもっとも美しいアレクサンドリアを見渡し未来の古代ローマを思い描いたのです。

その夢を成し遂げるにはローマの頭脳となる人物が必要であることも痛感したのでしょう。それから1年後アレクサンドリアを去るときやって来ます。

カエサルは近代都市古代エジプトと芸術的な美しさを持つ古代エジプトを目に焼き付けるとポントス国の王であるファルナケス2世の軍隊と衝突します。これをゼラの戦いと呼びます。後に「来た、見た、勝った」と残した言葉が有名になります。

その勢いでローマに戻ると強大な権力を持つ『独裁官』に任命されます。

それから数カ月後(紀元前46年4月)タプススの戦い、一年後(紀元前45年3月)のムンダの戦いでの勝利を持って古代ローマの内戦は終結しました。

ようやく内乱に終止符を打つことが出来たカエサルは『永遠の都ローマ』を近代都市へ生まれ変わらせる決意をします。

このとき彼自身も生まれ変わったのかも知れません。鉄人カエサルはフォロ・ローマが見渡せるカンピドリオの丘から鋭い視線を投げ込みます。

そしてユリウス暦と総合都市整備計画法を制定。

更に蓄えた豊富な資金を次の継承者に残し夢を託します。彼は古代ローマの大地を踏みしめた時から自らの運命を承知していたのかも知れません。なぜなら彼が思い描く遥かなる夢を叶えるには途轍もなく大きな変革が必要になるからです。今となっては巨大国家の頂点を目指し怒涛のように激しく過酷な人生を生き抜いた彼にしか知り得ない事なのかも知れません。


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♪♪~古代ローマの頭脳『マルクス・ウァロ』~♪♪

マルクス・ウァロは、かつてはカエサルと戦った敵。
ファルサルスの戦いの後ウァロはユリウス・カエサルの最高の頭脳となります。

ポンペイウスと共にカエサルと戦った武将です。

(功績)
ローマの内乱でカエサルと剣を交えた人物ではあるが卓越した能力がある事を見抜いたカエサルは学者として多くの図書を収集させたことで重要な学術書を残すことに繋がりました。
ここに人間カエサルのスケールの大きさが窺えます。敵を味方にするスケールの大きさと卓越した洞察力が新たな古代ローマを作る基礎になったと思われます。


☆補足
遥か未来のために、我が命を狙う敵を味方にすると言う事が出来るのですから凄い人物です。
現在は、この時代からすると考えられないほど平和な世界です。社会基盤が貧弱な広大な世界でこのようなスケールの大きな事を考え実践するとは、私の想像を遥かに超えているのでイメージ出来ません。


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♪♪~古代ローマの政治体制について~♪♪
古代ローマの政治体制について
共和国ローマ(共和政)

紀元前509-紀元前27
☆元老院
元老院(=上院)の言葉の由来は長老達の集まりからきているようです。古代ローマの上院(元老院)は王政時代の古代ローマに出来た古い行政機関です。そのため日本語では現状の上院と意味を分けるため元老の上院=元老院と呼びます。機能は王政時代、ローマ共和国時代、皇帝時代に分かれます。

《重要》
門閥派とは元老院派のことであり王政時代から伝統的に運営されてきた名門貴族の特権を保持し拡大しようとする勢力です。このことから日本では門閥と呼ぶようです。民衆派はそれを反対する勢力になります。

☆独裁官
☆属州総監
☆執政官
☆法務官
☆造営官
☆財務官
☆護民官
☆監察官

このお話しを基本ベースにした上に
『チェリー・クラージュの大冒険~レッドプラム皇帝と秘密の扉~』があります。
是非、動画の朗読も聴いて下さい。
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Published on May 20, 2013 06:10
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