雲州下屋敷の幽霊
さて、本日紹介するのは、谷津矢車先生の「雲州下屋敷の幽霊」です。
江戸で起きた事件をモチーフにした、短編集で、どの作品も人間の情念が描かれていて、読み応えがあるのですが、谷津矢車先生の作品の魅力といえば、何と言っても、その空気感にあると思います。
現代とは異なる時代を描いていながら、情景はもちろん、空気感まで伝わってくるのです。
最初の1ページを読んだ瞬間、強制的にタイムスリップさせられたような感覚に陥ります。
それほどまでに、谷津矢車先生の描き方が素晴らしいのです。
さらに、私が驚嘆しているのは、これだけリアルな空気感の演出を、最低限の文章で描いていることです。
リアルに表現する為に、たくさん書き連ねることは、誰でも出来ます。
ただ、それをやると文章が重くなり、読まされている――という感覚が芽生えてしまいます。
これだと、読者は離れていってしまうものです。
時代ものが苦手という方は、きっとこの部分が大きいのでは無いでしょうか?
谷津矢車先生は、的確かつ最小限の表現で、江戸の空気感を創造してしまうのです。
これは、圧倒的な知識量があってこそ――だと思います。
いや、そんなレベルではありません。
以前、ある作家さんと会食をする機会があったのですが、その時、谷津矢車先生の話題になりました。
作家同士の会食で、自然に話題に上がるということで、谷津矢車先生が、いかに凄いかが分かると思います。
しかし、今日、伝えたいのは、その先です――。
その時、私は「谷津矢車先生は、江戸時代からタイムスリップして来た人に違いない!!」
という主張をしました。
酔った勢いで、冗談を言っていると思うでしょ?
でも、違います。
そもそも、私はお酒が呑めないので、完全にシラフでの発言です。
しかも、割と本気でそう思っています。
だって、そうでないと、そこまでリアルな描写が出来る理由が、説明出来ないのですよ。
もちろん、描写が凄いだけではありません。
冒頭でも書きましたが、異なる時代を描いたとき、もっとも注意しなければならないのが、人間の感情の部分です。
現代とは、生活も違えば、価値観も違う。
そのままの状態で描いてしまうと、ピンと来なかったりするものです。
しかし、谷津矢車先生の作品は、そうはならない。
ちゃんと現代の読者が共感できるように、心情の部分をコネクトしているのです。
違いはあるけれど、それは、異世界の話ではなく、地続きの過去であることを、読者に認識させてくれます。
江戸という時代を身近に感じることが出来る。
だから読んでいて、感動できるのです。
作品の内容の紹介になっていないような気もしますが、興味の湧いた方は是非!!
時代ものが苦手だという方にこそ、読んで欲しい作品です。
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