モノマネ芸人、死体を埋める

さて、本日紹介する本は、藤崎翔先生の「モノマネ芸人、死体を埋める」です。



往年の名投手、竹下竜司のモノマネ一本で生活しているモノマネ芸人の浩樹。

竜司本人にも気に入られ、酒のお供をして、お小遣いを貰う関係だった。

だが、そんなある日、竜司が人を殺してしまう。竜司が殺人犯になってしまうと、自分もモノマネ芸人として生活できなくなってしまう。

浩樹は、竜司と死体を埋めることになるのだが……。

 

本作では、モノマネ芸人たちの裏側が、実にリアルに描かれています。

楽屋裏の様子から、普段の生活に至るまで、会話はもちろん、心情も実にリアルかつユーモラスに描かれています。

 

それもそのはず。

調べてみると、著者の藤崎翔さんは、元芸人さんだそうです。

 

だよね~

ここまでリアルで自然な描写は、取材でどうこうなるものではありません。

 

実体験があるからこそ、醸し出すことが出来る空気感というのは、あるのですよ。

 

藤崎翔先生に限らず、自分の経験を作品に活かしている作家さんは、実はかなり多いです。

有名なところでは、池井戸潤先生は、元銀行員だそうです。他にも、お医者さんや弁護士など、様々な資格や職業を持った作家が、特異ジャンルで本領を発揮している作家さんは、枚挙にいとまが無い。

 

本作の藤崎翔先生も、芸人時代の経験が、作品に反映されていて、他の作家には生み出せない世界観を創り出しています。

 

しかし――。

 

リアリティーだけなら、わざわざ紹介したりしないのですよ。

 

本作は、クライムサスペンスとして、極上の仕上がりになっています。

 

事件によって登場人物たちの気持ちに歪みが生じるだけでなく、関係する人たちのそれぞれの思惑が複雑に交錯し、読んでいて着地点を見失う。

 

この物語は、いったい何処に向かうんだ??

 

――と混乱させられるのです。

 

この感覚こそ、クライムサスペンスの醍醐味ですよね!!

 

それだけではなく、モノマネ芸人という設定を、ただの設定ではなく、必然として活かしているのも見事です。

 

ネタバレになるので、あまり多くは語れませんが、モノマネ芸人だからこそ成立する物語として仕上げています。

 

言葉にしてしまうのは簡単ですが、めちゃくちゃ高度な技術が必要になってきます。

 

それをさらっとやってのけてしまう力量は、並々ならぬものがあります。

 

しかも、ハラハラさせられるだけでなく、流石、元芸人さんだけあって、台詞の一つ、一つが面白いのです。

 

ワードチョイスが秀逸なんですよね。

 

ヤバい状況なのに、思わずふっと息を漏らして笑ってしまう。

 

緊張と緩和の塩梅が絶妙なんですよね。

 

これは、他の作品も読まねばなりませんね。

 

興味の湧いた方は是非!!

 


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Published on August 15, 2023 17:43
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Manabu Kaminaga
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