言語は語順   言語習得のミニマリズム 沼畑直樹










心の中で、空がきれいなだと思う。そのときは、たいして言葉にはなっていない。





つぶやくなら、「きれい」。





まわりに人がいても、「この人は何に対してきれいと言っているのだろう?」となる。





なので、それを隣にいる人に伝えるときには、「あの空きれいだね」と言う。









言葉はコミュニケーションのために生まれた。





なので、「きれい」と思ったことを相手に伝えたいときに、「何が」きれいなのかを伝えようと思い、主語ができた。





それは語順の誕生でもあった。主語のあとに次の言葉を加えるというルールだ。









「何が」「きれい」





最初に、その「何が」を人は考える。





「あの空が」





それを聞いた隣の人は、「あの空が」なんなんだろうと考える。





だけども、だいたいは予想がついている。





「あの空が」きれい、きたない、広い、きらい、すき、高い、青い…。





誰でも、主語、対象物を口にすれば、次の言葉は喉から出かかっている。





最初に「きれい」と伝えたいと思ったならば、「あの空が」の次は「きれい」と言う。





そしてコミュニケーションは成り立つ。









主語のあとに、それを形容する何かを言う。





これは英語も同じだ。





学校では「is」を「です」と覚えるが、話すときの母国語的な感覚で言うと、「です」ではない。





That sky is が「あの空が」で、beautifulが「きれい」。





That sky is beautiful.





※文法的にはisが過去形になるとwasで、日本語は「です」が「だった」になるので同じとされている。









I want an apple. リンゴが欲しい。





という場合は、日本語と英語の語順の違いは明らかだ。





日本語では「欲しいリンゴが」とは言わないし、英語では I an apple want. とは言わない。





この語順こそが言語間に壁と違いを作っていて、英語と日本語では顕著だ。また、このことについてはすでに何度も指摘されているが、重要度としてはそれほど高い位置に設定されていない。次々と文法やスペル、発音方法といった課題が出てきて、あとまわしにされていく。









実際は「言語=語順」くらいに重要で、主語のあとに何を言い、その次に何を言うかという順序の連続が言語を成り立たせている。





目の前の相手と話すときも、「あの空がきれい」のときのように、日本語も英語も、何かの言葉を言って、次の言葉を繋いで、という連続でしかない。





だからこそ、日本語の語順で言葉を話す人にとって、違う語順で話すのが難しく、例文を覚えて文を一気に話してしまおう…という人が増えてしまう。





他の言語を覚えるのは複雑なイメージがあるが、語順を最初に徹底的にやり、実際に誰かに伝えるために一言一言作っていくようになれば、習得するスピードは早くなる。









「リンゴほしーな」と思ったときに、隣に人に伝えようと思い、最初に「誰が」を言おうとして、Iと言って、英語圏の場合は主語のあとに動詞だから、I an apple とは絶対にならないし、wantと言う。wantのあとは目的語が来るのだから、an appleと言う。そういう、一語一語付け加えていくのがリアルな言語とスピーキングだ。





単語を覚え、発音を覚え、文法を覚えて…と言語習得は複雑なイメージがあるが、シンプルにミニマイズしていくと、「言語は語順(word order)」。





英語ネイティブの教師には、そういった「母国語との語順の違い」の苦労が伝わりづらいし、教えることはできない。





日本人こそ、しっかり「言語=語順」という課題を意識、語順通りに言葉を出していくトレーニングをすべきだ。









文章の後半は前半の理解にかかっている。









英語を聴いていて、わけがわからない場合は、主語と述語を聴きとれていない可能性がある。聴きとれていないときに後半部分を話されて、その部分が聴きとれたとしても、誤解して受け取ってしまう。





何より大事なのは主語の聴きとりで、次に述語となる。





それがわかれば、そういった心の状態、受け入れ状態で話したり聞いたりする。





後半部分は前半の理解があって聞いているので、完全にコネクトしているのだ。





Most remarkable change for me visually with this





is





the back.





日本語に訳すと「私にとって、これの視覚的に最も顕著な変化は後ろです」となるが、主語が長い。





主語の種類は豊富で、主語自体が文章になったり、無生物主語といって人や生物以外が主語になったりする。そのパターンを理解し、主語を理解するというのが大事だと、この例文を見るとわかる。





話し方としては主語の部分を一気に言って、一息ついてis the back. と言ったりする。





お互いに主語を理解し、その上でis the backという言葉を受け入れる。





主語がわからない状態でis the backを聞いても、正しい理解は難しい。









The A and B are so smooth and precise. (Which)Makes this feel so much more polished.





「AとBはすごくスムースで精密だ。それがこれをとても磨き上げられた感覚にしてくれる」





この場合は最初の文そのものが次の文の主語になっている。そのため、その最初の文の理解があってこその次の文の聴きとりとなる。





もちろん、語順は主語と述語だけではない。他にもWho, what, where, when, how, whyという順序があったり、さまざまなパターンがある。だけでも、一度やってしまえれば数日でまずは学ぶことができるだろう。

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Published on April 16, 2019 21:46
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Fumio Sasaki
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