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ガロエイ卿はこう叫んでいた。 「草ッ原に死骸が――血みどろの死骸が!」オブリアンの事等は少なくとも、彼の心から全く消え去ってしまっていた。 「ではヴァランタンに伝えなくてはなりますまい」と博士は相手が実見した事実を途ぎれ途ぎれに語った時、こういった。「しかし警視総監その人がここに居られるのは何より幸せです」 彼がこういっている時に、大探偵のヴァランタンが叫声を聞きつけて書斎へはいって来た。
「不思議ですなア、皆さん」一同が急いで庭へ下り立った時ヴァランタンは云った。「世界中至るところに犯罪を探り歩かねばならぬ私が、今それが自分の家の裏口から事件が起ったのですからな。だが場所はどこですか?」
一同は芝生を横ぎった。河から夜霧が 淡々 立ち始めていたので歩行はあまり楽ではなかった。けれどもブルブル 慄 えているガロエイ卿の先導で、彼等はやがて草地の中に横たわっている死体を見付け出した。――
「この庭には門がないようだがな」と彼はおだやかに云った。
我々はこの被害者がどうして殺されるに至ったを探究する前に、我々はどうして彼がここにはいるに至ったかを探究しなくてはならんのです。
「これはお邪魔いたしますな。しかし新事件をお話しするために使者に立ちました!」 「新事件?」とシモンはくりかえした、そして眼鏡越しに、傷ましげに彼を見つめた。 「はい、どうも気の毒にな」と師父ブラウンはおだやかに云った。「第二の殺人事件が起ったのですて」
今度のも前と同じ伝でな、首斬事件なんですて、第二の首は例のブレインさんの 巴里 街道を数 碼 ほど先へ行った河の中で真実血を流しておったのを発見したんでな、それで皆んなの推量では、あのブレインさんが……」