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707 pages, Paperback Bunko
First published January 1, 1998
森博嗣のS&Mシリーズ第9作『数奇にして模型』。今回も私は自分なりの仮説を立てて謎に挑みましたが、またしても見事に作者に敗北しました。しかし、落ち込むどころか全身に知的な悦びが広がり、痛快でたまりません。
本作の最大の魅力は、私たちの思考回路に深く刻み込まれた「常識」の巨大な盲点を見事に突いていることです。密室状態の現場から首なし死体が発見されるという奇怪な事件。これを「常識」の枠内で解釈しようとした瞬間、読者の思考はすでに作者によってKOされています。食べきれないラーメンを何度も作っては一口だけ味見して片付ける男の行動のように、私たちが当たり前だと思っている常識や固定観念を疑うことこそが、本作のトリックを打ち破る唯一の鍵なのです。
極上の論理パズルに加え、お馴染みの犀川・萌絵コンビの掛け合いも健在です。さらに今回は、常にハンディカメラを回し続ける奇人・大御坊が加わり、キャラクターたちの群像劇としても最高潮の面白さを誇ります。単なる犯人当てにとどまらず、自らの脳細胞をフル稼働させて「仮説」を組み立てるプロセスを心から楽しめる傑作です。(星4評価)