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安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 [Anshin Shakai Kara Shinrai Shakai E: Nihon Gata Shisutemu No Yukue]

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リストラ、転職、キレる若者たち──日本はいま「安心社会」の解体に直面し、自分の将来に、また日本の社会と経済に大きな不安を感じている。集団主義的な「安心社会」の解体はわれわれにどのような社会をもたらそうとしているのか。本書は、社会心理学の実験手法と進化ゲーム理論を併用し、新しい環境への適応戦略としての社会的知性の展開と、開かれた信頼社会の構築をめざす、社会科学的文明論であり、斬新な「日本文化論」である。

253 pages, Paperback Shinsho

First published January 1, 1999

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Toshio Yamagishi

15 books1 follower
山岸俊男

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January 12, 2020
集団主義、おもてなし、思いやり文化の日本人と言われてきたが、実はそう単純な話ではないことを社会心理学的実験研究の数々から示し、新書にまとめた秀作。入念な研究をよく考えられた順序で紹介し、構成がしっかりしていて読みやすい本だった。

著者の山岸は、昭和とそれ以前の日本社会の全体主義的傾向は個人間に存在する内心からの信頼関係ではなく、集団の利益に反する個人行動を妨げる相互監視と相互規制の仕組みにより社会的不確実性の少ない状態の「安心」が保たれた社会だったからとする。他人への信頼感にしても、日本人よりアメリカ人の方が強く、社会的ジレンマの実験における協力率もアメリカ人の方が高いという、アメリカ人より日本人のほうが実は個人主義的という画期的な視点も与える。

バブル以前は当たり前だった終身雇用の崩壊など日本社会も変化し、社会的不確実性は増すばかりだが、これへの対処は基本的に他人への一般的な信頼感の醸成か、「人質」や「担保」の交換を保証する仕組みやコミットメント関係を結ぶこと。日本社会は内集団でコミットメント関係が保たれる安心社会だったが、機会費用を考えると内集団ではコストの節約になるものの、外集団に対してはコストの増加をもたらす。後者との接触が増える日本社会ではコミットメント関係を膨大なコストを払い維持することは懸命ではないと山岸は考える。

ロッターの「対人信頼尺度」とその派生尺度を用いた実験では、他人への信頼度が高い人(高信頼者)はお人好しではなく、対人関係の中での情報に敏感でそれに基づく適切な行動をとる「社会的知性」の高い人であることを、多くの実験は示す。一方、低信頼者はそういった情報に、より鈍感である。さらに、社会的知性が高い高信頼者は、他人と協力することが必要と思っている割合が高い。一方、低信頼者は他人と協力関係を築くことは不可能と思う傾向があり、協力関係など重要ではないと考えがちなのかもしれない。

他人への信頼度は、社会的知性の違いと考えられる。関係性検知を核とした社会的知性を「社会的地図作成型知性」として、人間性検知を核とした「ヘッドライト型知性」と対比させる。地図型知性に長けた人は身の回りの人間関係に敏感で詳細な地図を作り環境への適応の助けとする。ただし地図がない場合は適応しにくい。コミットメント関係の維持が難しく社会的不確実性が大きい社会でヘッドライト型知性を活かし、かつ地図作成型知性の行き場を奪う負のループを避けるには、政治や制度の透明性を確保することが必要と指摘。

出版から20年以上経つが、少なくとも日本社会は透明性ある方向には変わらなかったのではないか。安心社会が崩れ、信頼関係を社会構造で担保する米国社会のようにもなれず、問題は解決されないまま先送りされているところを憂慮せざるをえない。
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