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長く日陰者と侮蔑されながらひとりの男を愛し続け、ついには大公妃になった女の話(「大公妃ビアンカ・カペッロの回想録」)、異教徒の海賊とのあいだの秘めた恋物語(「エメラルド色の海」)、男しかその職につけないというローマ法王の歴史の中に、じつは女の法王がいたという話(「女法王ジョヴァンナ」)など、これらの短編は、じつは史実だけなく偽古文書や民間伝承などをもヒントにして創られた歴史フィクションなのである。
タイトルが示しているように、この本のテーマは「愛」である。あるいは一歩踏み込んで「性愛」といってもいい。しかし、それは堕落や淫靡(いんび)や退廃といったマイナスなイメージを意味するものではない。作品の背景となった時代のイタリアは、ルネッサンスの華やかな文化が花開いた一方で、ベネチアやフィレンツェ、マントヴァなど大小の国々が乱立し抗争が絶えなかった。政治的、人間的な関係が錯綜していた時代は、女たちも自分自身の生き方を極めなければ生きていけない時代でもあったのだ。
著者は、そんな彼女たちを傍観者として眺めているのではなく、その生き方や考え方に共感している。ここに描かれた「愛」とは、どれも自らの信ずる生き方を真っ当した女たちの、真摯な姿なのである。(文月 達)
292 pages, Paperback Bunko
First published January 1, 1975