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旧友、加古慎二郎が異国で自殺したのをきっかけに、主人公の杉井は、忘れたはずだったある少女を思い出す。中学のときの初恋の相手、塔屋米花である。数十年消息不明であった彼女が、加古の死に関わっていたのは何故なのか。杉井は、米花の行方を突き止めたいという気持ちに突き動かされ、彼女の過去を探りはじめる。塔屋一家を知る町の人々や、元同級生、そして米花を愛した男たちの証言を得て、やがて彼女の空白の時間が明らかになっていく。
本書は、米花に魅せられた男のひとりである杉井と、米花を憎悪の対象として見る加古の妻、美須寿による、ふたつの視点から書かれている。それぞれが独自に塔屋米花という人間の実態に迫ることで、彼女の輪郭が浮き彫りにされていくさまは、推理小説さながらにスリリングだ。さまざまな人間関係が交錯するその人生を通して、人と人との繋がりや縁について考えさせられる。そして強い輝きを放つ米花の存在そのものが、本書の最大の魅力となっている。(砂塚洋美)
504 pages, Paperback
First published January 1, 1998