Sung-Gi Kim149 reviewsFollowFollowAugust 6, 2016彼等の案出した武士道という武骨千万な法則は人間の弱点に対する防壁がその最大の意味であった。元来日本人は最も憎悪心の少い又永続しない国民であり、昨日の敵は今日の友という楽天性が実際の偽らぬ心情であろう。昨日の敵と妥協否肝胆相照すのは日常茶飯事であり、仇敵なるが故に一そう肝胆相照らし、忽ち二君に仕えたがるし、昨日の敵にも仕えたがる。そして武士道は人性や本能に対する禁止条項である為に非人間的反人性的なものであるが、その人性や本能に対する洞察の結果である点に於いては全く人間的なものである。天皇を拝むことが、自分自身の威厳を示し、又、自ら威厳を感じる手段でもあったのである。天皇制自体は真理ではなく、又自然でもないが、そこに至る歴史的な発見や洞察に於いて軽々しく否定しがたい深刻な意味を含んでおり、ただ表面的な真理や自然法則だけでは割り切れない。未完の美は美ではない。あの偉大な破壊の下では、運命はあったが、堕落はなかった。無心であったが、充満していた。人間は墜落する。義士も聖女も墜落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救うわなければならない。人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。